「兄さん、罠は仕掛け終わったよ」 「ふふ、そうか。これで私達のテント周りの守りは万全だな」 「そうだね、兄さん」  いわゆる紫一色状態である。 「…でも兄さん、まだ一人の女の子も捕まえてないよ」 「ふふふ。ラルフよ、戦略というやつだ。  まず第一に足場を固め、その後にゆっくりと獲物を捕らえるのだ」 「つまり、漁夫の利を狙うんだね」 「そのとおりだ」 「さすが兄さん。卑怯だね、最高だよ」 「ふふふ、それはお前の兄だからな」  そう言うと、ラルフを胸元に引き寄せるジェスト。  …ど、独特の世界だ。 「じゃあそろそろ子猫ちゃんを奪いに行こうか」 「そうだね、兄さん」  そうして二人は他人のテントへと向かう。 「兄さん、このあたりは?」 「ふふふ、この近くにあの矢矧大和とかいう暑苦しい男のテントがあるはずだ」 「なんでまたあいつのテントを?」  そう、茸山の方には既に二人の少女が捕らえられており、そしてその二人目はつい先ほど捕らえられたばかりのはずだ。  つまり、狙うならそちらの方が得のはずだ。 「ふふ、ラルフよ。…これは美意識の問題だ」 「美意識?」 「そうだ。…例えば食べ物で、ブタの食い残しを食べたいと思うか?」 「思わないね、兄さん」 「それと同じだ。  …その点、あの熱血漢は正義とかやらのため、捕まえた少女は手つかずのはずだ」 「すごいよ、兄さん。すごく卑怯だよ」 「ふふふ。なんといってもお前の兄だからな」  ズボ…… 「兄さん、落とし穴だよ」 「ふふふ、そのようだなラルフ」 「落ち方まで優雅だよね僕たち」 「ふふふ、もちろんだともラルフ」  ローレン兄弟、一回休み。  ちょうどそのころ… 「さてと、この辺りに女の子がいないかな?」  さくたろうが探査機を片手にうろうろしていた。  無論、たよりは直感だけである。 「僕、女の子に対しては勘が強いから」  誰に言っている?  ブブーー… 「ちぇっ、またはずれだ。…誰でもいいから出てこないかな」  …お前、当初の目的はどこに行った。 「うおおおおぉぉぉぉーーーー!!!!」  燃える漢(おとこ)、我らが矢矧大和は戦っていた。  …ヘビとだけど… 「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!」  ……かれこれ3ターンくらい…もう、行ったり来たりして… 「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!!!!」  …こいつも当初の目的を忘れている気が… 「ぐっふっふ。かなり幸先いいのう。  これは儂が優勝だな」  マジンガーデブ…茸山正義がつぶやいた。  ちっ、…いやなことに、こいつだけは着々と目的を遂行してやがる。 「さてと、次の娘はどこに隠れてるのかな」  …大和、こいつ何とかしてくれ。…ヘビと戦ってなくて、さあ。 「ふんふふん。…よーしっと」    パーーーーン!! 「よし、真っ白」  帽子をかぶった少女がつぶやいた。 「まったく、矢矧さんてば服には無頓着なんだから」  少女は大和に救われてからこのかた、彼が服を着替えているのを見たことがない。 「ちょっ、その言い方だと着替えを覗きたいのかと思われるじゃない」  …これは失礼。 「まったくもー」  少女はロープにつった洗濯物越しに太陽を眺め見る。 「…あの子もこの太陽を見ているのかな。……うん、きっと見てる」  そうつぶやくと、胸に下げた勾玉をいじる。 「矢矧さんは駄目だって言ってたけど、絶対ついてくんだ。  ……絶対に助けてあげるからね、慎子」  いじっていた勾玉をぎゅっと握りしめる。 「…そう、この勾玉にかけて…」    …そんな様子を見ている人物がいた。 「ふふ。見つけたね、兄さん」  お尻にヘビをくっつけたまま格好つけるローレン弟。 「ふふふ。そのようだな、ラルフ」  同じく、足に虎ばさみをつけたまま格好つけるローレン兄。 「けっこういきの良さそうな獲物だね」 「ふふ、助かったものだと思いこんでしまっているのさ」 「これから何が待っているのかも知らず、かわいそうにね」 「ふふふ。希望がはかなく消え、絶望に変わるとき、あの小鳥はどんな歌声を聞かせてくれるのかな」    ああぁぁーーーー!! 君子ちゃんがピンチだ!!  さあ、みんなで声をあわせて大和を呼ぶんだ!! せーーのーー……  やぁーまとぉーーーーー!!!! 「…なんだ!!」  動物的、正義の直感で大和が振り向く。  彼の周りには大量のヘビの死体が転がっていた。 「…ふっ、…こいつは大物だな」  彼の背後からのそりと現れたのは、2,3メートルはあろうかという大蛇だった。 「…楽しませてくれよ」  そう言うと、ニヤリと笑った。   ……やっぱり本来の目的を忘れてる… 「だ、誰!?」  背後に感じた気配に君子が振り向く。  もちろんそこにいたのは、ローレン兄弟だった。 「見つかっちゃったね、兄さん」 「ふふふ、そうだなラルフ」 「…さ、参加者…」  勾玉を握りしめたまま後ずさる。 「まあ、そんなところだ」 「ふふふ、僕たちと一緒に来てもらおうか」  ラルフがそう言って手を差し伸べる。 「…じょ、冗談じゃない。私は慎子を助けるんだ」  勾玉をにぎる手にさらに力を込める。 (…たすけて。  …たすけて、お祖父ちゃん。  …たすけて。  …たすけて!  …たすけて大和さん!!) 「はっ!!」  倒した例の大蛇に、腰を下ろしていた大和が再び振り返る。 「…こいつは主だな…」  そこでとぐろを巻いていたのは、5メートルはあろうかという大大蛇だった。 「…楽しくなってきた」  心底楽しそうに、そう言った。  ああーーー、あてにならん!!  …………………………  ………  … 「…はっ!?」 「…気がついたみたいだよ、兄さん」  君子は頭をおさえて、辺りを見回す。 「…こ、ここは?」 「ふふっ、私達のテントだよ。  …もっとも、私の美意識からは外れている無骨なテントだけどね」  ジェストは芝居がかった口調でそう言い、手にしている物をいじくる。 「あっ!!」  君子は胸を押さえ、そこにあるはずの物がないことに気づく。 「ふふふ。…捜し物はこれかな?」  そう言って、楽しげな様子で手にしている物を君子に見せびらかす。 「かっ、返せ!!」  君子が飛びかからん勢いでジェストに詰め寄ろうとした瞬間…  バキッ… 「…あっ…」  何が起こったのかわからないまま、地面に転がっていた。  鼻がすごく熱く、手で押さえるとトロリという感触が伝わってきた。 「まったく、兄さんになんて口のきき方だ」  憤然とした口調でラルフが言った。 「…その辺にしておけ、ラルフ。それ以上するとかわいい顔がだいなしになってしまう」 「わかったよ、兄さん」   (…こ、こわい…)  君子は自分の体がふるえていることに気づいた。  ラルフは手加減なしで、君子を殴ったのだ。  …本気で顔を殴られるという初めての体験に、今まで積み上げてきた価値観が揺らぐのを感じていた。  …そう、自分が女性ゆえに、ぎりぎりのところで手加減してもらえるものだという考え方が確かにあった。 (…こ、こわいよ…)  ふるえる体を押さえてうずくまる。 「おやおや…」  そんな君子の様子に、ジェストはがっかりしたような声をもらした。 「…友人を助けるのではなかったのかい?   …これだって、…もういらないのかい?」  そう尋ねた。  その声に、はっと振り返ると、君子はジェストを睨み付けた。 「……ふふふ。…いい目だ」 「…それを返せ。…今に、今に大和さんが来てくれる。…きっと来てくれる!」 「ふふふ。…希望に満ちた、実にいい目だよ」 「必ず、必ず大和さんが来てくれるんだ!!」  自らに言い聞かせるようにそう言った。 「…私はそういう目が大好きだよ。  …そして…」  ジェストはそう言うと、勾玉のネックレスを握っていた手をはなす。 「あっ!」  重力に従い、それはゆっくりと落ちていく。 「その目が絶望に変わる瞬間がね!」  足下に落ちたネックレスを踏みにじり、そう言った。 「…なっ! …なんてことするんだ!」  ネックレスの上にある足をどけようと、君子は必死で力をこめる。 「ふふふ……」 「足を…、足をどけてよ」  ドスッ… 「…かっ…はっ…」  至近距離でみぞおちを蹴り飛ばされ、呼吸が止まる。 「まだ口のきき方がわかってないようだね」  君子を蹴った男…ラルフがそう言った。 「……か、返して…コホッ、コホッ…ください。  …だ、だいじな…ケホッ…ものなんです」  息も切れ切れに、そう言うのがやっとだった。 「ふふふ。……そうか、…大事なものなんだ…」  楽しそうにジェストが言った。 「すごく大事そうだよ、兄さん」  ラルフも笑いをかみ殺しながら言った。 「それは返してあげるべきだろうな」 「ふふふ、そうだね」  そう言うと、ジェストは足をどけてネックレスを拾い上げる。 「ほら、返してあげよう」  ひょい…と無造作に放り投げた。 「あっ!」  君子が受け取ろうと手を伸ばす。 「ラルフ!」 「わかってるよ、兄さん!」  ガーン…ガーン…ガアアァァァーーーーーン…………  3発の銃声が鳴り響いた。 「……ひ、…ひどい…」  目の前にころがっている、砕けちった勾玉の残骸を握りしめて、うめくようにつぶやいた。 「……どうして、…どうしてこんなひどいことをするの…」  ポロポロと涙があふれ出る。砕けた勾玉はそのまま、砕けた希望をあらわしているようだった。 「ふふふ。どうしてかって…」  ジェストはそう言いながらゆっくりと君子に近づき、息がかかるほど側にまで顔を近づけた。  そしてペロリと君子の鼻血をなめて言った。 「……たのしいからさ…」 「…なっ! …んっ……んん!!」  何か反論しようとした君子の唇を奪いさる。 「んっんん…んんん……」  さらに両手をとり、君子の反撃の自由をも奪う。 「んむ、んっんっん……」  ゆっくりと唇を開かせて、舌を滑り込ませる。 「んん、んんんんーーー……」 「兄さん、僕も混ぜてよ」  一方的にそう宣言すると、ラルフは君子の背後にまわり、後ろから胸を揉みしだく。 「んんーー…んんんんーーーー……」  君子の胸を揉みながら、ラルフは首筋に舌をはわせる。  君子は二人の間に挟まれ、なす術なくされるがままになる。  そうして立ち上がった二人に、挟まれたまま立たされる。 「ん、んんー…んんんんーー……」  かたく閉じられていた君子の両足の間に、前から足が割り込んでくる。  君子の体がビクリとふるえ、自らの足にさらに力をこめる。  しかし、それをあざ笑うかのように、後ろからも足を入れられる。 「…ん、んんーーーーー……」  いやいやをするように頭を動かそうとするが、口を封じているジェストのために、それすらもままならない。  前後から挟み入れられた足のせいで、自らの足に力を入れることもできず、完全に自由を束縛されてしまった。    ………  … 「ぷはっ…ふーーー」  離れた唇と唇から糸がのびる。 「…コホッ、コホッ……も、…もうやだ……」  涙声でうったえる彼女をしり目に… 「…どうもこの体勢では、両手が使えないな。  ……ラルフ、あれを持っていないか?」 「ふふふ。もちろん持ってるよ、兄さん」  そう答えると、ラルフは君子の体から離れる。 「…はぁー…はぁー……」  少しだけ余裕のできた君子は『あれ』というのが気になり、荒い息をつきながらラルフの様子を見る。 「…ひっ!」  ラルフが鞄から取り出したものを見て、思わず悲鳴をあげた。 「…や、やだ、…そんなのやめて!」  涙ながらに懇願する君子の様子に、ラルフは薄ら笑いを浮かべながら近づき、その手に手錠をかけた。  そして、テントの上に吊ってあるロープを通して、君子のもう一方の手にかける。 「や、やだ! …やだよ、こんなの…」  ローレン兄弟にはちょっと手をのばせば届くところにあるロープでも、二人より身長の低い君子にとっては吊されたようなものだった。  なんとかつま先に力を入れることによって、自分の体重が手首にかからないようにするのがやっとであった。  …カチャカチャ…… 「やっ! やだっ、やめてよ!」  自分のズボンが下ろされているのを知って、股に力を入れようとするが、つま先立ちで何とか立っている君子にはそれすらできなかった。 「あっ、ああっ……」  あっさりとズボンは抜き取られてしまい、白地に青のストライプの入ったパンティーがさらけ出された。 「ふふ、かわいらしい下着だ」  そう言いながら、ジェストは下着の上から指で割れ目をなぞる。 「あっ、やっ…」 「ふふふ。兄さん、僕も」  そう言って、ラルフも下着の上からお尻の谷間をなぞる。 「そ、そんなっ! …や、やめて……」  前後から行われる下着の上からの愛撫に君子は体をよじるが、拘束されている手のために、ほとんど動けない。 「…も、…もうやだよう……」  身動きもとれず、いいようにいたぶられる自分に対して涙があふれてくる。 「…兄さん、上はどうしようか?」 「…上?」 「…あっ…あっ…あっ……」  会話の最中も、指の動きだけは止まらない。 「ほら、手錠がかかってるから脱がせられないじゃないか」 「そんなもの、破けばいいじゃないか」 「ああ、それもそうか」  そう答えると、ラルフの手が君子の上着にかかる。 「……や、…やだ! 破かないで!」  なぜならあとは全部洗濯してしまっており、君子の服は今これしかないのだ。  淡い期待かもしれないが、この服を破かれてしまうと大和に助けられた後、何を着ればいいのかと考えてしまう。  ……本当に、淡い期待である…… 「…ふっ、何をいまさら…」  その君子の懇願を、ラルフは一笑にふした。  …ビッ…ビビイィィーーー……… 「やっ、…ぃやあぁぁぁーーーーーー!!」  君子の上着はただの布きれと化し、体に引っかかっているだけのものとなった。 「ふふ、…これはこれでなかなかそそるな」 「そうだね、兄さん。…強姦しているようだよ」  …事実、強姦である… 「…ひ、…ひどいよ…ひっく、…な、なんでこんな……  ……っや、やああぁぁーーー……」  4本の手が君子の体中をまさぐる。  首筋を撫で上げ、胸を揉み、下着の上から大事なところをこすりあげ、足をさする。  その4本の手が、まるで一つの意志のもとで動いているかのように、君子の体中をまんべんなく刺激する。 「……もっ、あふっ…や、やめて…おかしく…おかしくなっちゃうよーー!」 「ふふふ……」 「ふふふふふ……」 「…あっ、…はっ、はあ…やだっ…も、もう…変に…あっ、はっ…はああ……」  …いっそ、変になった方がいいのかもしれない…  君子がそんなふうに思ったとき… 「ふふふ。…そろそろいいかな」 「…いいんじゃない、兄さん」 「…はっ…はっ…はっ…はああ……」  そんな会話が君子の耳に入ってきた。 「…私から先にいっていいかな?」 「もちろんかまわないよ、兄さん」  ジェストの手が君子の下着…彼女に残された最後の衣服にかかった。 「…あっ、ああっ、…そ、それだけは……」   無駄だと知りつつも、言わずにはおられない。 「ふふふ……」  しかし、そんな君子の反応を楽しむように、ゆっくりと…だが確実に下着が下ろされていく。 「…あっ、あっ、…た、たすけて…たすけてよ……」  手に握っているものを、強く握りしめながら君子がつぶやく。 「…たすけて、…やまとさぁん…」  完全に下着が下ろされる。 「…いやだよ…たすけてよ、…やまとさぁん…」  君子の両目からあふれるように涙がこぼれ落ちる。 「ふふふふふ……」  君子の右足を抱え上げ、自らのものをあてがう。 「…やっ、やっ、…やだっ! …やまとさあぁぁーーん!!」  弱々しく首を振り、涙をながしてそう声を振り絞る。  しかし…… 「ふんっ!」   「あっ…あああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」  ジェストはかけ声とともに君子の中へと押し入った。  君子の中で最後の抵抗を試みていた壁ごと、一気に突き破る侵入であった。 「……かっ…くはっ……」  目を見開き、息も絶え絶えにしている君子をしり目に… 「…どうだい、兄さん?」 「ふふふ、やはり初めてのようだ。なかなか具合がいい」 「そいつはよかったよ」 「さて、…動くか」  そうひとりごちると、おもむろに抽送を開始する。 「…ひっ、ひい…ぐっ、うあっ……」  あまりの痛みのために、君子が悲鳴をあげる。 「…もっとかわいらしく鳴いてもらえないかな」  腰の動きはそのままに、勝手なことを言う。 「…ひっ、やめっ…いたっ、いたい…」 「ふふふ…。そりゃあ痛いだろう…」  さらにスピードをあげて、ジェストはそう言った。 「…あっ、ああっ…だめ、…こ、こわれる……こわれちゃうよーー!!」 「ふふふ、…実にいい声だ」  ジェストは泣き叫ぶ君子の声を、音楽のように楽しむ。 「もっといい声で鳴いておくれ」  そう言うと、さらに速度をあげる。 「…やっ、…し、しぬ…しんじゃうよおぉぉーーー!!」 「ふふふふふ……」 「……兄さん」  それまで側で見ていたラルフが君子の後ろに回り込む。 「…あっ、っあああぁぁぁーーー!!!」  必死で体重を支えていた左足を、ラルフが背後から抱え上げたことによって、君子の体重すべてがジェストとの結合部分にかかったのだ。 「…僕も入っていいかな?」  ラルフは君子のお尻に押し当てると、そう言った。 「……やっ、やあっ、そこはっ!」 「もちろんさ、ラルフ」  ニッと笑うと、ジェストはそう言った。 「……っ!! ……っうわああぁぁぁぁーーーーー !!!」  ラルフは慣らしもせずに、強引に押し込んだ。 「兄さん、こっちの穴もかなりいいよ」  そして楽しげにそう報告した。  無理矢理突っ込まれたためにどこか裂けたのであろう、あたたかい鮮血がラルフのものを伝い落ちた。  しかし、ラルフは気にもとめずに…逆に潤滑油がわりに抽送を開始する。 「……あっ、はっ、んっ…んん……うっうう……」 「ふふふ。感じるか、ラルフ?」  前から激しく突き動かしながら、ジェストが声をかけた。 「うん。…兄さんを感じるよ」  後ろから君子を壊さんばかりに動きながら、ラルフが答える。 「…うっうう…くっ、はあ……あっ…あっあっ……」 「壁をへだてて、入っているお前を感じるぞ」 「うん、感じる。…感じるよ兄さん。  ……こんな壁、なければいいのに…」  ラルフはそんな物騒なことを言うと、さらに力強く動く。 「…っっ!! …っはあああぁぁぁぁ……」  君子には、ただただ悲鳴をあげることしかできなかった。 「に、兄さん、…そろそろ……」  さらにスピードを上げながら、ラルフが声を出す。 「ああ、一緒にいこう」  ラルフにあわせて、ジェストもスピードを上げる。 「…ああっ、ああっ、…あああぁぁぁーーー……」  あまりの激しさに、君子の手にかけられている手錠がガチャガチャと鳴り響く。 「…に、兄さん!!」 「…ら、ラルフ!!」 「…あっ! …ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」  君子の最奥に、最後の一刺しを同時に突き入れると、たまっていたものを吐き出す。 「…あっ…ああ…ああああああ……」  どく…どく…と自らの体内にそそぎ込まれるものを、君子はただ受け止める。 「…兄さん…」 「…ラルフ…」  二人は余韻に浸りながら、最後の一滴までそそぎ込む。 「……あっ……はあ…はっ………はあ……」  全てを出し尽くして、ようやく二人が君子から離れる。  両の足は自由になったが、無論、自分の体重を支える力など残ってはいない。…そのため、両手の手首に体重がかかる。  その手首に走る痛みにより、飛びそうになっていた意識がつなぎ止められる。   (……やっと…やっとおわった……) 「……次は交代しようか?」 「……そうだな」  ……狂宴はおわらない…… (……ごめん、慎子…わたし、もうだめだよ……)  握りしめられていた手から力が抜ける。  その手から、緑色のかけらがこぼれ落ちる。  ……それは、わずかに残されていたひとかけらの希望まで、ついえたことを表すかのようだった……  ………  … 「…兄さん、これからどうする?」 「…新たな獲物を捕らえないとな」 「…そうだね。…あれは、もうだめだし…」  ラルフは、すみに転がるものを一瞥して言った。 「…ふふふ。…やはり、希望が絶望に変わるまでが賞味期間だな」  ジェストはそう言うと、我ながら名言だ…と言わんばかりに笑った。 「…さあ、行こうかラルフ」 「…うん、兄さん」 「…ふ、ふふ。…近い、近いぞ…」  探査機を見つめながら、茸山がつぶやいた。 「…このあたり、……このあたりだ」  地面に落ちているお菓子の袋などといったものを発見して、そうひとりごちる。 「…ふふふ、どうやら3人目も儂のもののようじゃな」  笑いが止まらんといった感じで、そうつぶやいた時… 「………お前、悪だな…」 「な、なんじゃ!?」  その声にあわてて辺りを見回す。 「…お、お前は…」  茸山の前に一人の男が立ちふさがる。 「……悪は狩りとる…」  …無論、矢矧大和である。  ……お前、今まで何してやがった…君子ちゃんが君子ちゃんがぁ…… 「ふふん。若造が、正義をきどるか」 「気取ってなどいない。  …俺が正義だ」  大和はためらいなく言い放った。 「ほざけ、…ゆけ! お前達!!」  茸山はそう叫ぶと、自らの護衛達に命令した。 「………」  無言で大和につめよる護衛達。 「………悪は、……倒す」  そうつぶやいた大和の口元は、…確かに笑っていた。  ………………  ……  … 「……やるな、若造」  黒山と化したSPの横に、悠然と立つ大和に向かって茸山が言った。 「…ちっ、……後はお前だけだ」  歯ごたえのなさに舌うちをしながら、大和が言った。 「…いきがるなよ、若造」  そうつぶやくと、ゆっくりと構えをとる。 「…儂とて体一つでのし上がった男だ。命(タマ)の取り合いとて幾度となく経験しておるわ!」  茸山はそう叫ぶと、大和との間合いを一気に詰める。  ガシイッ!!  茸山から繰り出された右拳を、大和は右腕でガードする。 「…………なかなか、楽しめそうだ……」  大和は肉食獣のような笑みを浮かべて、そうつぶやいた。  それと同じ時、別の場所では…… 「……どこなの、ここ…」  少女がつぶやく。 「…家に帰りたいよ…」  一体何度、そうつぶやいただろう。 「うう、お母さん…」  思わずこぼれ出た涙を拭おうと、ポケットに手を入れる。 「……あれ、…落としちゃったかな」  そうつぶやくと、後ろを振り返って辺りを調べてみる。 「……で……さ……」 「…そ………だ……な…」 「…!!」  聞こえてきた人の声に、びくっとすると少女は林のなかに隠れた。  ……………  ……  … 「…これを見てよ、兄さん」  ラルフは地面を指さして、自分の兄を呼んだ。 「…ほう、これは…」  そこには、白地にオレンジのチェックの入ったハンカチが落ちていた。 「…まだ近くにいるかな?」 「……かもしれんな…」  そんな会話をかわすと、辺りを見回す。  茂みに隠れている少女は、ローレン兄弟がこちらの方向を見るたびに、息が止まりそうになるのを感じていた。 (…に、逃げたほうが……)  なぜ…と言われてもわからないが、そういう風に感じて、少女がその場をゆっくりと離れようとした時……  パキッ…… 「!!」  足下で小枝の折れる音が、いやに大きく響いた。 「……兄さん…」 「……わかっているさ、ラルフ…」  ローレン兄弟は視線をあわせると、同時に微笑みを浮かべた。 「………お嬢さん、出ておいで」 「………」  息が止まりそうだった。 「……そこにいることはわかっているんだよ」 「……」  目をギュッと閉じて、ただ神様にいのる。 「ふふふ…。…でてこないつもりなら……」 「…そこまでだ!!」 「…なんだ?」 「…兄さん、あそこ」  ローレン兄弟が振り返ると、そこにいたのは…… 「じゃあぁぁーーーん! 女の子の味方、さくたろう登場!!(…うーん、俺ってかっこいい…)」 「……なんだ、お前は?」  どう見ても参加者…つまり、参加費用五千万を納められそうには見えないさくたろうに対して、ラルフが聞いた。 「…なんだ、聞いてなかったのか? 女の子の味方、さくたろうだ」  さくたろうはしゃーしゃーと言ってのけた。 「…さ、…さくたろう君!!」    その叫び声に、三人は同時にそこを振り返った。  そこにいたのは…無論、ローレン兄弟達にとっての獲物(…まあさくたろうにとってもそうなんだけど…)である少女であった。  せっかくのチャンスだというのに、女の子は逃げ出すことも忘れて、思わずそう叫んでいたのだった。 「あっ、愛里!!」  さくたろうは一瞬、驚いた表情を浮かべるがすぐに… 「…愛里、……やっと見つけた」  そう言って微笑んだ。 「さくたろう君! ……どうして、ここに…」」  まだ信じられないという顔で、少女がさくたろうに聞いた。 「そんなこと決まってるだろ。…愛里を助け出すために来たんだ」  何を当たり前な…という顔をしてそう言うと、にっこりと笑った。 「あっ! ……さ、…さくたろうくん…さくたろうくぅん……」  少女は涙を流しながら、たださくたろうの名前を呼ぶ。 「…愛里、一緒に帰ろう…」  さくたろうはさわやかな笑顔を浮かべると、やさしくそう言った。 「…うん、…うん!!」  愛里と呼ばれた少女は何度も…何度もうなずいた。 「……ちょっと待ってもらおうか」 「…なんだよ…」  横手からかかってきた声にいいところを邪魔されて、さくたろうは不機嫌そうに返事をした。 「そのレディはこちらが先に保護したんだ。君には悪いが消えてもらえないかな?」  あくまで上品にラルフが言った。 「…そう言うわけにはいかないな。俺は愛里を助けるためにここに来たんだ」 「…さくたろう君…」  愛里が目に涙をためたまま、少し嬉しそうにつぶやいた。 「…ずっと愛里のことを心配していたんだ。…無事で本当によかったよ」  さくたろうは愛里へと視線を戻すと、そう言って微笑んだ。 「…本当、さくたろう君…」  ………嘘だ… 「…当たり前だろ、愛里…」  ……嘘だ! 「ああ、…さくたろう君…」  …嘘だあぁぁぁーーーーー!!! 「…だからといってこちらも、はい、そうですか…とはいかないのだよ」  ジェストはそう言って髪を掻き上げた。 「……どーやら、馬に蹴られたいみたいだね」  さくたろうは視線を再びローレン兄弟に戻すと、不敵にそう言った。 「…うま?」  ポカンとするジェストに対し…… 「言うだろ、何とかを邪魔する奴は…ってね」  さくたろうはウィンクしてそう言った。 「…さ、…さくたろう君……」  愛里が頬をそめてうつむいた。 「…口で言っても、わからないみたいだな…」  ラルフはそう言うと、構えをとる。 「…やろう…ってわけだ…」  それに対して、さくたろうも構えをとって応じた。  期せずして、異なる2カ所で戦闘が始まった。  ガシィ…ビシバシ……  年齢を感じさせない動きで、茸山は大和を攻め立てる。 「くっ!」  脇腹をかばいつつ、大和は後ろにひいた。 「がはは、…どうやらけがをしているようだな」  めざとくそれを見つけると、茸山は笑った。 「…ふん、このぐらい丁度いいハンデだ」  そう言うと、大和はわずかに唇の端をつりあげた。 「……若造が!!」  茸山は猛然と突っ込むと、脇腹めがけて渾身のけりを放つ。  ガシッ……ボキイッ!!  鈍い音が響いた。 「…なっ!!」 「……予測可能な攻撃など、怖くも何ともない」  大和は茸山のけりを、エルボーブロックで受けたのだった。 「ぐわあああぁぁぁぁーーーーー!!!」  茸山は、すねから折られた足を抱えてのたうち回る。そこへ……  ゴキャ…メキャメキャ……  大和の放った拳が、茸山の顔面へとめりこむ。 「ぐはあっ!!」  吹っ飛び、ピクピクとする茸山に対し、ただ一言…… 「正義は勝つ!」  当然だと言わんばかりに、そう言い放った。  ……とた… 「…おにいちゃん、……つよーい」  ぽかんとした顔で、その少女は言った。 「…君は?」  大和はそう聞きつつも、その少女に対して何か違和感を感じていた。 (…この娘、どこかで見たような…) 「はみははみだよ。おにいちゃんは?」  少女はそう言うと、興味津々のまなざしで大和を見つめた。 「俺の名は矢矧大和、君のようにここに連れてこられてきた少女を助けに来た」  違和感を感じつつも、大和はそう答えた。 「そうなんだあ、よかったあ。はみ、もう歩くのつかれちゃったの、おんぶして」  はみというその少女は無邪気に笑い、そう言った。 「ここ、なんにもなくてつまんなかったんだあ」  大和の背中で、はみが不平を漏らす。 「……そうか…(この少女は確か……)」 「でね、でね……」  やっと人に会えたのが嬉しいのだろう、はみは矢継ぎ早に話題をふっては、笑顔を浮かべている。 (…間違いない。ファイルにのっていた少女だ…) 「……ふわああぁぁ…おにいちゃん…それでね……」  眠たくなったのか、はみはあくびをしながら、それでもやっと見つけたお兄ちゃんとの会話を続けようとする。 「……眠いなら寝ていいぞ」  大和がそう声をかけると…… 「……すーすー………」  かわいらしい寝息で答えてきた。 「ふっ…」  その寝顔をみて、大和はいつもと少し違う笑みを浮かべた。 「……俺が討つのは悪だけだ……」  シュン…シュシュシュシュシュン………  ナイフの風きり音が耳をかすめる。 「ちょっ…ちょっと待て!」  ぎりぎりのところでナイフをかわしながら、さくたろうが声を絞り出した。 「ふふ、どうしたんだい? 女の子の味方君」  ラルフは余裕の表情で聞き返した。 「ただでさえ二対一なのに、刃物を持つなんてずっこいぞ!」  さくたろうが指さしながら抗議した。 「ふふふ。卑怯だって言われちゃったよ、兄さん」 「そうか。それは大変な誉め言葉だな」  ローレン兄弟はそんな抗議に意も介さなかった。  ザシュッ!! 「……ぐっ!!」 「…さくたろう君っ!!」  ラルフのナイフがさくたろうのほほを切り裂いた。 「ふふふ……」  ラルフは笑みを浮かべたまま、ナイフについたさくたろうの血をなめる。 「さくたろう君、逃げてっ!」  愛里が悲鳴にも近い叫び声をあげる。 「…愛里、逃げるときは一緒だよ」  ほほの血を拭いながら、さくたろうが言った。 「ふふ、逃がしゃしないよ」  余裕の笑みを浮かべたままラルフが口をはさむ。 「さくたろう君っ、でもっ…」  愛里が涙をうかべて何かを言おうとしたとき…… 「…愛里の前なんだ…」 「…えっ?」 「…かっこつけさせろよ」  さくたろうはそう言うと、ニッと愛里に笑みを向けた。 「ふふふ。……かっこいいね。……かっこいいよ」  ラルフはおかしくてたまらないという顔で、そう言った。 「うおおおおぉぉぉぉーーーー!!!」  さくたろうは両手で頭をガードしたまま、闇雲にラルフに向かってつっこむ。 「ふふふ…。  ……ボディががらあきだよ」  ドスッ!  ラルフのナイフが深々とさくたろうのお腹に突き刺さる。 「…!!」  愛里は両手で口をおさえて、目を見開いた。 「……ふふふ。さーて、お嬢さん…」  ラルフが視線をさくたろうから愛里へと移した瞬間……  ゴキャアアァァ!!  さくたろうの右拳が、アッパーぎみにラルフのあごを捕らえた。  足でしっかりとラルフの足を踏んづけているところなど、かなり場慣れしていることを示していた。 「…さ…さくたろうくん……」  信じられない…という表情の愛里に… 「…密航したときからの、唯一の娯楽だったんだけど…ね」  さくたろうは制服の中からナイフのささったマンガ雑誌を取り出し、笑顔で見せびらかせる。 「きっさまあぁぁーーーー!!!」  メキャアアァァァ!!!  背後からせまってきたジェストのあごに、後ろ回し蹴りをめり込ませていた。 「…言ったろ。馬に蹴られて…ってね」  ずるずる…とジェストの体が落ちていく。 「…ああ、馬だけじゃなくて、鹿にまで蹴られちゃったな」  ドサリ…とジェストの体がうつぶせに倒れた。 「馬鹿あっ!!」 「…って、何だよ!!」  勝利の余韻をだいなしにする物言いに、さすがのさくたろうも怒って、愛里の方へ顔を向けた。 「……ばかあ…」 「…愛里…」  愛里は肩をふるわせて涙を流していた。 「…わっ、わたし、ひっく…さくたろうくんが…し、しんじゃったかと……ひっくひっく…おもって…し、しんぱい……」 「…ごめんな、愛里」  涙で顔中をくしゃくしゃにした愛里を、さくたろうはそっと抱きしめた。 「……さくたろうくぅん……」 「……もう、大丈夫。心配いら…  ……ゴホッ、ゴホッ……」  さくたろうが言葉の最中にせきこんだ。 「…さ、さくたろう君っ!!」  さくたろうの制服に血がついていた。 「ち、…血が、…さくたろう君、血が……」 「……兄貴のほうは大したことなかったんだけど、弟のほうは…  …あのマンガ、五百ページぐらいあったのにな……」 「しゃ、しゃべっちゃ駄目! …はやくテントにもどろ! ねっ!」 「……あ、ああ…(…やばいな、意識がもうろうとしてきた……)」  …………………  ………  … 「…………?」 「………気がついた?」  ぼんやりとした頭に声が聞こえる。 「……こ、ここは?」 「…テントだよ。…さくたろう君の」  ようやく目の焦点があってくる。  そこにうつったのは、心配げな表情をした幼なじみ……大切な幼なじみ……園山愛里の姿だった。 「……愛里…」 「…よかった。……ほんとによかった」  愛里はそう言うと、またポロポロと涙を流した。 「…これ、愛里が?」  さくたろうは自分のお腹に巻き付けられている、ブラウスを指さして言った。 「うん。…包帯とか、なかったから」 「……心配、…かけちゃったな……」  さくたろうはそう言うと、笑顔をうかべた。…まだ傷は痛んだが、これ以上愛里に心配をかけたくなかった。 「……どうして…」 「えっ?」 「…どうして来たの?」 「……愛里?」 「…どうして来たのよ!」  その言い方は、まるでさくたろうが来たことを責めているかのように聞こえた。 「…こんなにあぶないとこに…どうして……」 (……あいかわらずやさしいな。……こんなところに、俺は……)  愛里の言わんとすることがわかり、さくたろうは笑みを浮かべた。 「…あぶないところだからさ」 「えっ?」  愛里が顔を上げる。 「…あぶないところだったからこそ、愛里を助けに来たんだ」 「……さくたろ…」 「…俺、愛里のことが好きだ!!」 「………うくん…」  愛里が涙に濡れた目をパチクリさせる。 「…愛里がいなくなって、…俺、はじめて気がついたんだ。  ……愛里が……好きなんだって…」 「…さくたろうくん…  …わたしも、…わたしもさくたろうくんのこと…」  愛里の涙腺がふたたびゆるんでゆく。 「…笑えよ。  ……俺、愛里の笑顔が見たくてここまで来たんだぜ」 「うん。……そうだね」  涙を浮かべつつも、それは最高の笑顔だった。  …… 「…ん、んんん………」  二度目のキス…触れあうだけだった一度目と違い、さくたろうの舌が愛里の口の中を動き回る。 「…んん、んんん…………ぷはあ、…はあはあ…」  二人の口から、つーー…と糸がのびた。 「……愛里」 「…さくたろうくん…」  愛里が潤んだ目でさくたろうを見上げる。…が、すぐに心配げな表情を浮かべた。 「…さくたろう君、お腹のけがは大丈夫なの?」 「えっ? …ああ、この程度のけが、平気だよ」  …事実、言われるその瞬間まで、さくたろうはけがのことを忘れていた。 「……でも…」 「…大丈夫だよ」  さくたろうはそう言うと、愛里を胸の中に抱きしめた。 「……愛里…こわいのか?」  伝わってくるふるえから、さくたろうが聞いた。 「………えっ、うう…、……うん…」  愛里はか細い声で、そう答えた。 「…俺に抱かれるのがこわいのか?」 「…そうじゃない……と、思う…」  さくたろうの問いに、愛里はあいまいに答えた。  愛里自身、何を怖がっているのかがわからないのだ。…さくたろうとこうなることは、ある意味…愛里自身も望んでいるはずなのに…… 「……でも、こわいの……」  愛里はただそう言った。 「……そうか」  さくたろうはそう言うと、愛里の頭をなでた。 「…さくたろう君?」  愛里がわずかにとまどいの声をあげる。それに対し…… 「…その気持ち、なんとなくだけどわかるよ…」  愛里の頭を優しくなでながら、さくたろうが言った。 「えっ?」 「…変わること…が、こわいんだろ…」 「……変わること?」  さくたろうの言葉を愛里が反芻する。 「そう。  …俺とそういう関係になる。…ずっと大事にしてきたものをなくす。  そうした変化が……いや、そうした変化によって、自分が変わってしまうんじゃないのかが不安で…  …こわいんだろう?」 「……そう…なのかな? ……そう、かもしれない…」  愛里はさくたろうの言葉をかみしめながら、そう答えた。 「…平気だよ」  そう言って、さくたろうが微笑む。 「さくたろう君」 「愛里は変わらないよ。俺の知ってる優しくて、そして…  …大好きな愛里のままだよ。」 「……さくたろう君」  愛里も微笑みを浮かべた。  …さくたろうの優しい…ちょっと照れたような表情に対して… 「…そうだ。…一つだけ変わるな」 「えっ?」  びっくりしたような表情を浮かべる愛里に… 「…俺達の関係…が、ね。  …大切な幼なじみから…大事な恋人に…な」  そう言って、キスをするのだった。  ……………  …… 「…愛里、きれいだよ」  一糸まとわぬ姿ですわりこんだ愛里に、さくたろうが言った。 「…あ、ありがとう…んっ、あっ…」  愛里の首筋を舌で舐めあげながら、右手で胸の柔らかさを確かめるようにもみしだく。 「あっ、さ、…さくたろうくぅん…」  耳の穴に舌を入れられて、愛里の体がビクリとする。  チロチロと耳の穴を刺激して、再び首筋へと舌を動かす。 「…だ、だめだよ…き、きたない…」  愛里のか細い制止の声も気にせず、舐めあげ、吸い付いた。 「…ああっ、きたないよ…だって、昨日水浴びしてから…なにも…」  愛里が弱々しく言った。それに対し… 「…大丈夫、きれいだよ。…それに…愛里の味が…においがするよ」  そう言うと、さくたろうは愛里の胸に顔をうずめた。 「…さくたろう…くん」  愛里は胸の中のさくたろうの頭を、いとおしげに撫でた。 「あっ、んん…」  愛里の胸に当てられていた、さくたろうの右手がふたたび蠢きだし、さくたろうの頭を撫でていた愛里の手は、自らの居場所を確保するかのように、さくたろうの頭にしがみついた。 「んあっ! …くぅん…」  さくたろうは両手で胸を揉みしだきながら、ピンと立ち上がってきた乳首を舐めあげ、吸い付き、かみついた。 「あっ! ああっ! だ…だめっ! さ、さくたろうくん、や、…やめっ! は…はげし…」  まるで俺のもんだ…と言わんばかりの、さくたろうの激しい責めに、愛里は息も絶え絶えに訴えた。 「…あ、あいりっ!」  さくたろうは手の動きはそのままに、顔を近づけて愛里をよんだ。 「さ、さく…んっんん……」  キス…と呼ぶには激しすぎるキス。  口中を舐め上げ、窒息するぐらいに吸い付いた。 「ん、んんっ…ぷはっ、ふはあ…ん、んんんっ! んあっ、ふはっ…んんんん…」  息をしようと逃げる愛里のくちびるを、執拗に追い、とらえる。 「ん、んあっ! あっ、さくた…んんっ、も…もう…あっ、んんっ…  ああっ! そ、…そこはっ!」  いつのまにか胸から移動していたさくたろうの右手は、しっかりと愛里の中心をとらえていた。 「あっ、そ、そんな…」  胸をせめる激しい左手の動きに対し、さくたろうの右手はゆっくりと…正確に、愛里の敏感な部分を刺激していた。 「あっ! ああ…」  さくたろうの舌が、ゆっくりと胸からおなかに…おへそに…と、下へ下へとおりていく。 「あ、あいり…」  胸から左手をはなし、両手で愛里の両足を、これ以上無理というぐらいに広げた。 「ああ、そんな…は…はずかし…んああっ!!」 「…ほんとうにきれいだよ、愛里」  愛里のそこをじっと凝視しながら、さくたろうが言った。 「ああっ、はずかしい…はずかしいよ、さくたろうくん」  両手で顔をおおい、いやいやをするように首をふる。 「…すごくきれいだ……ペロリ…」 「あっ! そ、そんなとこ……きたな…  だめっ! きたないよ! なめないで…」 「…きれいだって」  ペロ…チュ、クチュ…ペチャ… 「や、やだっ! …お、おと…たてないで…」  指の間からのぞき見るようにさくたろうの様子をうかがいながら、そう懇願した。 「………愛里の味がする…」 「…は、…はずかしい…」  火がでそうなほど真っ赤になった顔が、指の間からもうかがえた。 「…!」  さくたろうが顔をおおっていた愛里の両手をつかんだ。 「…愛里」  互いの指を絡ませあう。 「………うん」  さくたろうの手を、ギュッと握って愛里がうなずいた。  ……チュク… 「…あっ!」  さくたろうのものが愛里のそこへとあてられる。 「…愛里…いくよ」  さくたろうが宣言するように言う。 「…うっ、…うん…」  愛里もふるえながらも、しっかりとうなずいた。  ズ、ズズ… 「あっ、いっ…」  まゆをひそめ、愛里は目に涙をにじませながら耐える。  ギュッ… 「…さくたろうくん…」  大丈夫…と言うように、愛里の手をつよくにぎって、さくたろうは大きくうなずいた。 「…うん、うん!」  愛里も泣き笑いの顔をうかべてうなずき返す。  …ズズ…ズズズ…… 「……っ! …んん……」 「愛里、もうすぐ…もうすぐだ」  ……ズズズ…………ズン! 「…っんあっ! …ぁああっ!!」 「…は、…はいった。…はいったよ、愛里」 「……う、うう…うん。…感じるよ、さくたろうくんを」  痛みをこらえつつ、愛里はけなげにもそう言って微笑んだ。 「お、俺も、…すごく愛里をかんじるよ」 「うん。…うれしい、さくたろうくん」  痛いだろうに、それでも本当に嬉しそうに愛里はそう答えた。 「……愛里…うごくよ」 「えっ、…あっ、まだ…」  愛里の制止も聞かず、さくたろうは腰をゆっくりと引き… 「…ぃあっ! んっくうっ!」  そして再び愛里の中へと… 「…いっ、ぁああっ!!」 「いっってええぇぇーーーー!!」 「…さ、さくたろうくん…」 「…お、…おなかが…」  見ると、さくたろうのお腹に巻いたブラウスに、血がにじみ出してきていた。  腹に力を入れたために、傷口が開いてしまったのだろう。当然といえば当然の結果だった。 「たっ、たいへん! さくたろうくん、早く手当しなきゃ…」 「…や、やだ…」  さくたろうが振り絞るように言った。 「愛里だって痛い思いをしてるんだから、これぐらい…」 「だ、だめだよ! 無理したら…」 「いやだっ!!!」 「…さ、さくたろうくん…」 「…せ、せっかく一緒になれたんだ。もっともっと愛里を感じたい。もっと一緒になりたい。  …この一瞬を大事にしたいんだ…」 「……さくたろうくん…でも…」  愛里は嬉しいような、困ったような表情を浮かべるしかなかった。 「…だいじょうぶだから…」 「…う、うん…」  愛里は心配げな顔でうなずいた。  …… 「……んくっ…」  愛里の中に、ゆっくりとくさびを打ち込む。 「…ぁ…んあっ…」 「……ぐっ…」  愛里の中に入れたまま、さくたろうが愛里にしがみついた。 「…さくたろうくん?」 「……ごめん、愛里…」  さくたろうがつぶやくように言った。 「……しかたないよ」  愛里はそう言うと、やさしくさくたろうの頭をなでた。 「…ねっ、あせらなくてもいいんだよ。  今だってさくたろうくんを感じるよ、私の中にしっかりと…」  さくたろうの頭を撫でながら、愛里がやさしくそう言った。 「…うん、…そうだな…」 「…大事なのは二人の気持ちだよ。気持ちが通じ合っていれば大丈夫。  …そ、それに、こういうことは、か、…帰ってからでも…」  さすがに恥ずかしいのか、照れながら…それでも一言一言、大切に愛里が言った。 「…………………  ……そうかも、しれないな…」  さくたろうも納得したようにつぶやいた。 「うん、そうだよ。  …ま、また、帰ってから…しよう…ね。…こ、こんどは、私も…がんばるから…」  最後はボソボソと、愛里が言った。 「…うん。……いいな、それ。こんどは愛里に上になっても…  …そうだっ!! それがいい!!!」 「…ど、どうしたの、さくたろうくん?」  急に顔をあげたさくたろうに、愛里がびっくりしながら聞いた。 「愛里が上になってよ」  さくたろうが嬉しそうに言った。 「えっ…」 「そうすれば俺も痛くないし、…やっぱりこのまま終わりにしたくないんだ」 「…で、でも…」 「お願いだよ、愛里。俺、もっともっと愛里を感じていたいんだ。中途半端で終わらせたくない。  愛里と一緒に最後までいきたい!!」  さくたろうが真剣な表情で、愛里に懇願した。 「…………ぅん。……そこまで言うなら…」  愛里は顔をまっかにしてそう言った。  ……………  …… 「…あっ、あっ、…み、みないで、さくたろうくん……んっ、んんっ…」  あおむけに寝転がるさくたろうの上に、愛里はゆっくりと腰を落としていく。 「…俺のが、だんだんと愛里の中に飲み込まれてく…」 「や、やだ、…そ、そんなこと…んっ、あっ…はずかしいから…くうっ…」  さくたろうの膝をつかって、愛里は自分の体をささえる。 「…でも、ほんとだよ。…愛里も見てみろよ」  愛里の羞恥をさそうように、さくたろうが言う。 「や、やだぁ…あっ…んくっ…ふっ…」  顔をまっかにしながらも、けなげに腰を落としていく。 「…あはぁ、はっ、はっ…ふぅ…、…は、はいった…」  愛里の中に、さくたろうのものがすっぽりと入った。 「うん、入ってるよ、全部愛里の中に飲み込まれたよ」 「…あ、ああっ、そんないいかた…」  さくたろうの言葉に、愛里は耳まであかくする。 「…ほら、愛里、動いてよ」  そう言うと、腰をゆすって愛里をせかした。 「…んあっ! …う、うん…わかった…」  愛里は小さくうなずくと、膝に乗せた手に力をいれて腰をあげていく。 「…あっ、んっ、んあっ! ふっ…くっ……」  ゆっくりとできるだけ痛くないように、そして…できるだけ気持ちよくなれるように腰をあげていく。  そして、さくたろうのものが抜けるか抜けないかというところで、ゆっくりと腰を落としていく。 「…んっ、くうっ、…あっ、はあっ……」  ゆっくりと自分のペースで、愛里は腰の上げ下げをおこなう。 「…あっ、あっ、んっ、…あっ、んふうっ……」  その愛里のこえの中に、痛み以外のものを敏感に感じとったさくたろうは… 「ああぁっ!! ……さ、…さくたろうくん…」  愛里の腰に手をあてて、ズンと突き上げた。 「…愛里にばっかり動いてもらっちゃ悪いからね」 「そ、そんなこと…んああっ!! くっ、あああっ!!」  愛里の言葉が終わらないうちに、さくたろうは抽挿を開始した。 「あっ、あっ、あんっ! んっ、…んあっ! ああんっ!!」  愛里の倍以上のペースで、さくたろうは愛里を突き上げていく。 「…だっ、だめっ! …さ、さくたろう…くぅん…、はっ、はげし…」 「愛里っ!!」  さくたろうは体を起こして、愛里を抱きしめる。 「あっあっ! …さっ、さくたろ…うくん…」  愛里を抱きしめて、更にペースをあげる。 「あ、愛里っ!!」 「んっ、んあっ! さっ、…さくたろうくん! さくたろうくんっ!!」  二人とも、もはや何も感じない…自分のけがのことも、何もかも忘れ…  …ただ、互い以外に感じない… 「あっ! あっ! ああっ!! さ、さくたろうくん!!」 「あっ! あ、愛里いぃっ!!」  どくっ! 「あっ!」  どくどくどく…… 「ああああぁぁぁーーーーー!!!」  抱きしめあったまま、二人は絶頂に達した。  ………………  …… 「…さくたろうくん…」  愛里が、隣で寝ているさくたろうに声をかけた。 「…ん?」  さくたろうは、自分の腕に頭をのせて寝ている愛里に目をやった。 「…けが、平気なの?」  愛里が心配そうに、そう聞いた。 「…うん、平気…(だと思う)」 「…わたし、さくたろう君にあえて、本当に良かった」 「…俺も、愛里にあえて、ホントに良かった」  二人は互いを確かめあうように、もう一度抱きしめあう。 「…愛里…」 「…さくたろう君。…また、前みたいに学校に行けるんだよね」 「…前みたいに…じゃないよ」 「えっ?」  顔をあげた愛里にキスをして… 「前より仲良く…だよ」  ……………  …… 「…はあっ、はあっ……くそうっ!」 「…………」  二人の男…一人がもう一人に肩を貸しながら歩いていた。 「あいつ、ぜったいに許さない!」 「…………」 「…くっ! 兄さんは悔しくないのかい!?」  肩を貸している方の男が、もう一人の男の無反応に耐えかねて声をあげた。 「……ラルフ…」  ようやくもう一人の男が声を出した。そして… 「…まあ、いいじゃないか」 「なっ!? …に、兄さん、何を言ってるんだ!?」  ラルフと呼ばれた男が、納得いかないように声を荒げた。 「…まだ終わったわけじゃない。…この借りはあとで倍にして返してやればいい」  男は淡々とそう言った。 「……ふっ、ふふっ、…それもそうだね、兄さん」  納得いったように、ラルフもそう言うと笑みをうかべた。 「…考えようによっては、楽しみが増えたと言えるかもしれん。  …あの娘を恋人の前で抱いてやったら、どんな反応を見せてくれるかな?」  そう言うと、ジェストは微笑みを浮かべた。 「…ふふふっ、それはいいね。すごく楽しみだよ」  ラルフも、待ち遠しいと言わんばかりに笑った。 「…とりあえず、このうさはあれで晴らすか」  ジェストがボソリと言った。 「…うん、そうしようか」  ザッ… 「…なんだ?」  二人の行くてに、何者かが立ちふさがった。 「…なっ!」 「お、お前はっ!!」  …そして、そいつが口を開いた… 「…悪は倒す…」  ………………  …… 「……………………」 「…………………ぉぃ……」 「……おい!」  ゆっくりと、目を開ける。 「…目が覚めたか?」  ゆっくりと、記憶をたどる。 「……なんだ、…大和さんか…」  少女は、どうでもいい…と言うようにつぶやいた。 「………助けにきた…」  大和は一言だけ言った。 「……助けに……きた?  …………おそい……おそいよ…もうおそいよ…」  少女はゆっくりと言った。 「…おそいんだ…もう、…わたしはだめだよ…」  少女はなげやりにそう言った。 「……友を…助けるのではなかったのか?」  大和が再び口を開いた。 「……もう、だめなの…  …あの勾玉みたいに、私のちっぽけな正義感も、砕け散っちゃった…」  そう言うと、少女は涙を流した。 「…………砕けはしない…」  その声に、少女は顔を上げて大和を見た。 「…正義は砕けたりはしない。  …たとえ形を変えたとしても、だ!」 「…や、やまとさん…」  少女のつぶやきに対し、大和はうなずき返すと、持っていたものを握らせた。 「…こ、これは…」 「…もう一度言う、正義は不滅だ!」  大和ははっきりとそう言った。 「…………ぅん」 「…そして今一度聞こう。  ……友を…助けるのではなかったのか?」  大和は先ほどと同じ問いを、少女に聞いた。 「…………………もちろん…  ……もちろんだよ! …私は慎子を助けるんだ!!」  手に持ったもの…形を変えた勾玉…を握りしめて、君子は言った。 「…いい答えだ」  大和はニヤリと笑うと、そう言って君子の手を取った。 「…ありがとう、大和さん」  君子は自らの両の足で立ち上がると、そう言った。 「…礼にはおよばん。  ……これから俺は悪にとらえられている少女を助け出す…」  大和は急に話をかえた。 「……うん…」  なんだかわからないが、君子はうなずいた。 「…その少女達も、おそらく先ほどのお前のようになっている可能性が高いだろう…」 「……そう…だね」  おそらく、そうなってしまっているだろうと、君子も思った。 「…俺にはどうすることもできん。……だが、お前なら…  ……同じ苦しみを知っているお前なら…  彼女たちの苦しみを理解してやることができるだろう…」 「…やまと…さん…」  君子は大和の言わんとすることを理解し… 「…まかせて、大和さん」  しっかりとうなずいた。  その君子の反応に、大和は笑みを浮かべると… 「…では行くか、君子」  大和が右手を差し出して言った。 「…うん! 行こう、みんなを助けに」  差し出された右手を、しっかりと握って君子が答えた。  秘密結社『暁』のNo.1エージェント、矢矧大和は言う… 「自らの力を…中でも、自らの無力を知る魂は『真の正義』を持つことができる」  …と。  指令No.115742      島に巣くっていた『悪』は全て滅ぼした。   調査の結果、主催者はN26E18ポイントに拠点の一つを持つ模様。   即刻の壊滅作戦を要請する。   無論、景品として誘拐された一般市民、四名全員救出。   付け加えて、その中の一名に逸材の可能性有り。                                以上だ。